Sports Click Archives
スポーツディレクトリ >> 陸上競技・ランニング
TRACK AND FIELD
スポーツディレクトリ

陸上 NARUHODO The HISTORY
このコーナーでは、陸上の歴史にスポットをあてていきます。自分の得意種目にも、意外と知られていないエピソードがあるもの。ここではそんな話題の数々をご紹介していきます。
解説 尾懸 貢(筑波大教員)
第1回:BGMと重りつきだった古代ギリシャの走幅跳
 走幅跳は古代ギリシャの時代から五種競技のうちの1つの種目として行われていました。ただし、今日行われている走幅跳とはかなり趣が違っていたようです。
 遺跡から発掘された絵つぼなどから、歴史学者たちは当時の走幅跳を次のように推測しています。

Illustration by イシズカ千鶴子

重りを持って跳んでいた!
 競技者たちは、両手にハルテーレス(鉄アレイのようなもの)と呼ばれる重さ2.25〜10ポンド(約1.02〜4.54kg)、長さ12〜29cmくらいの石か金属でできた重りを持ち、リュートと呼ばれるフルートのような笛の伴奏に合わせて跳んでいたことがわかっています。助走距離は、12mくらいと短めで、踏み切る前に重りを持った両手を前方に振り上げて、その勢いで跳んだと考えられています。重りを持った跳躍では、タイミングをとるのが難しいのですが、反動をうまく利用すると、何も持たない跳躍に比べて遠くまで跳ぶことも可能です。実際に1854年には、ハワードが5ポンド(約2.27kg)のアレイを持って6m01という記録をマークしています。その当時の最高記録は5m80であることからも、重りを持つことが有利に働いたことがわかります。そのため、過去には国際陸上競技連盟のルールに、“重りや握り(グリップのようなもの)を使うことを禁止する”という趣旨の一文がありました。

厳しかった着地のルール
 リュートによる伴奏は、“助走から踏み切りの調子を整え、タイミングよく跳ぶためのもの”とか、“競技者たちの気持ちをわき立たせるもの”とかという推測がなされています。また、パーテルという踏み切り板から跳び、スカマと呼ばれる掘り返された着地地点に向かって跳んでいたようです。この頃は、着地に関するルールが厳しく、両足の着地跡が揃っていなかったら、正しい跳躍と認めてもらえず、記録は計測されなかったということです。これらのことから、古代ギリシャ時代の走幅跳では、現在とは違って、形式が重んじられており、現在の器械体操的な要素も含まれていたものと考えられています。

跳躍の英雄がマークした記録は?
 では、当時はどれくらい跳んでいたのでしょう。残された史料には、跳躍の英雄ファユルロスが、55フィート(16m76)跳んだという記録が記されています。
 しかし、現在の走幅跳の世界記録が8m95(M.パウエル、米)であることを考えると、この記録をそのまま信じることはできません。多くの学者たちが、この記録に関して、さまざまな解釈をしていますが、それらのうちの主なものを挙げてみましょう。
1. 連続跳躍の記録であった
2. つくりごとであった
3. 長さの単位が違っていた
4. 走幅跳の3回の試技の合計であった
 これらのうちでは、どうやら4の仮説が最も信頼できそうです。16m76を1回当たりに直すと5m60となり、納得することができます。



専門家コラムでは「編集者・小森アトムのNO RUN, NO LIFE」がお楽しみいただけます。
  [ 陸上競技・ランニング TOP ] 第2回 >>