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体をつくるトレーニングとリコンディション

第3回:メディシンボール

解説・高橋弘幸

Profile
高橋弘幸(たかはし・ひろゆき)
1969年1月22日、長崎生まれ。長崎南山→オレゴン州レーン・コミュニティーカレッジ→オレゴン州立大。97年よりツヅキ・グローバル(現大阪ツヅキグローバル)のコンディショニングトレーナーとなる。近畿選抜男子・国体兵庫選抜少年男子のチームトレーナー。近畿圏大会のケア主任も務める。大阪ハイテクノロジー専門学校スポーツ科学科常勤講師。

メディシンボールを使ったトレーニング

写真A
写真A
メディシンボールには、大小さまざまなものがあります

 まずメディシンボールの重さは、1〜5kgのものが主です。同じ重さでも、メーカーによってはサイズが小さかったり大きかったりするので、扱いやすいものを選ぶ必要があります(写真A)。無理してコントロールできない重いボールを使う必要はありませんよ。

 このボールを用いて行うトレーニングは『プライオメトリクス』というトレーニング法の一つで、主に短時間に大きな力を発揮する爆発的な筋力を鍛えることを目的とします。

 そこで、いくつかの注意事項を挙げておきます。

  • むやみにボールを投げるよりも正しいフォームで行っているかを確認します。
  • 疲労した状態で行ってもよい効果は期待できず、逆にケガの可能性が高くなります。
  • 筋肉だけでなく、腱や関節に対しても瞬発的に大きな力が加わります。ですから、これらの組織になんらかの問題がある時は、このトレーニングを避けます。
  • このトレーニングからくる疲労が回復するには48時間以上かかります。だから週に2回程度の頻度にとどめるようにします。
  • ボールを使ったトレーニングは集中力が低下すると、運動強度も低くなりがちになります。

 しっかり体の動きに集中し、できるだけ瞬発的に大きな力を出すようにすることが大切です。

 また、切り返し運動の時間がかかりすぎる場合や、目的とする動作よりも可動範囲が大きくなってしまう場合も強度が高すぎることが多いです。このような時は一度強度を下げて、適切なフォームを習得させてから、徐々に強度を上げていくようにします。誤ったフォームでたくさんの回数を行うことがないようにします。

 これらの注意事項をチームスタッフも選手もよく理解した上でトレーニングしてください。

バックスロー

写真B 写真C
写真B 写真C
<<バックスロー>>背伸びするようにボールを後方に放り投げる

 ではバックスローから説明していきましょう。
 このメニューで、体幹の伸展動作によるパワーの発揮を鍛えていきます。「バッティングとどう関係があるの?」という質問を受けることがあります。確かに、バッティングのフォームと写真B、Cの写真とを比較すると、身体を背伸びするようにしてボールを体の後方に放り投げるバックスローと、体を捻るようにしてバットを振るバッティングとでは動きが違うように思えます。しかし、ボールをバットがとらえてからフォロースルーまでには、体の背面の筋のパワーが必要です。フォロースルーを力強くしようとするなら、背中の力がなおさら必要です。だから、その必要な力をこのトレーニングで鍛えるのです。

写真D
写真D
反りすぎると腰を痛めるので注意

 ただし、かなり気をつけてもらいたい点があります。それはボールを放った時の背中の反りです。写真Cを見てもらえば分かる通り、まったくと言っていいほど反ってはいません。

 バックスローをさせると、写真Dのように腰から背中にかけて、反ってボールを後方に投げようとすることに意識を集中させすぎる人をよく見かけます。このような投げ方を続けると、バッティングの時にも腰や背中を反ってフォロースルーに入っていくクセを作ってしまいます。そんなことをしていると、重心があまりにも後ろに残りすぎて、腰が十分に回せなくなってしまう上、腰を痛める可能性もかなり大きいですから、気をつけてください。

 さてこの放り投げ方ですが、まず足を肩幅くらいに開いて、ヒザ、股関節を軽く曲げながら上体を前へ倒します。ボールは両足の間の少し前に持っていきます。顔は正面を向き(写真B)、その姿勢からすべての関節を伸ばしてジャンプするような感じでボールを斜め後ろへできるだけ高く放り投げます(写真C)。

サイドスロー

 続いてサイドスローを説明します。『極意』(=B.B. MOOK『バッティングの極意』2006年2月発売)のなかで紹介できなかったバリエーションも加えたいと思います。

 僕はどうすればボールをより遠くへ投げられるか教える時、投げ方を3つの段階に分けて教えています。

(1):基本的には腕と体幹だけを動かしてボールを投げます。最初の構えは写真E1からスタート。足は肩幅よりちょっと広めにとって、体が反ったりしないように気をつけます。まずボールを右側に体を捻って持っていき(写真E2)、すぐに勢いよくボールを左側へ持っていって、そのままボールを放ります(写真E3)。

写真E1 写真E2 写真E3
写真E1 写真E2 写真E3
<<サイドスロー>>腕と体幹だけでボールを投げる

(2):(1)の投げ方に後ろ足から前足への体重移動を加えて投げます。最初の構えと足幅はE1と同じです。まずボールを右側に体を捻りながら持っていきます(写真F1)。この時、自分の体重が右足に完全に乗るように、頭は右足の真上に来るようにします。そうしたら、すぐに勢いよく体重を右足から左足へと移し、同時にボールも勢いよく左側へと持っていって、そのままボールを放ります(写真F2)。

写真F1 写真F2
写真F1 写真F2
<<サイドスロー>>後ろ足から前足への体重移動を加える

(3):(2)の投げ方にヒジの伸展の力を加えて投げます。最初の構えと足幅はE1と同じ、体重移動はF1とF2と同じです。

 ただ、ボールを右側へ引いた時にヒジを曲げ、できるだけヒジが体から離れないようにします(写真G1、G2)。それからボールがほぼ前足を越える位置に来たら、ヒジを伸ばし、ボールを押し出すようにして放り投げます(写真G3、G4)。

写真G1 写真G2 写真G3 写真G4
写真G1 写真G2 写真G3 写真G4
<<サイドスロー>>ヒジの伸展の力を加える

 写真G4のところで、写真Dのように腰と背中をかなり反らせる人がいますが、できるだけ体の軸は真っすぐになるようにしてください。どうしても体が反る人は、腹筋の力が不足しているのかも知れませんので、腹筋のトレーニングを行ってください。

 このように、三段階でボールを投げさせてみて、ボールの遠投力の変化を確かめます。力の使い方やフォームなどが正しいとした上での話しですが、遠投記録は(1)→(2)→(3)の順で伸びます。理由は(1)よりは(2)、(2)よりは(3)に、投げるための新しい力が加わっているからです。

 僕は、バッティングも同じで体重移動にプラスしてヒジを伸ばす力をドンピシャのタイミングで出すと、球の飛距離が伸びると思っています。古武術のなかにも同じように“押す力(打撃のパワー)を大きく出したければ、すべての関節を大きく伸展させる練習をしなさい”と言っているものがあります。

写真H 写真I
写真H
ヒジを伸ばした体勢でパートナーを押す
写真I
ヒジを曲げた状態から伸ばしてパートナーを押す

 試しに写真Hのようにポーズをとってパートナーを押し飛ばしてみてください。もちろんパートナーは飛ばされないように踏ん張ってください。

 次に写真Iのようにポーズをとって、同じように相手を押し飛ばしてみてください。どちらの方が、相手を飛ばすことができましたか?

 後者のように曲がったヒジを伸ばしながらの方が、強く押し飛ばせたはずです。ということは、バッティングも同じだと思います。でも正しい体の使い方を覚えるまでは(1)〜(3)と順を追っていく方がいいと思います。慣れたら(3)の投げ方のみ行えばいいでしょう。

プライオメトリクスの注意点

 さてここでボールを投げる方向なんですが、どこに投げてもいいというものではありません。ぼくはボールの飛距離が一番伸びるのは、右バッターならセンターから少しライト寄りだと考えています。

写真J
写真J
投げる方向や距離を意識する

 だから、ボールを放り投げる練習の時も、投げる方向や距離を意識してください。
 また、ここに書いた説明や写真は右打者が対象です。左打ちの人は逆を行ってください(写真J)。

 これら2つのプライオメトリクスは、くれぐれも行き過ぎに気をつけてください。“キツいし、体のいろんなところにも痛みがあるけど、頑張って多く練習すれば、きっとすごいバッティングができるようになる”なんて根性論的な考え方は絶対に避けてください。そんなことをするとたいがいはケガをします。

 だから、最初は一つのメニューで5回、多くて7回を目安にしてください。そこから自分の体と相談しながら回数をちょっとずつ増やしていくとよいでしょう。もちろんボールの重さを1つ重いものにする方法でもいいですよ。でも少ない回数だからこそ一投一投に集中して行えるのだと思います。逆に言えば、その一回にパワーを出し切る力の使い方を学ぶのが、この練習の目的と言ってもいいかもしれません。まさに極意ですね。

 ところで、いないとは思いますが、裸足でこのトレーニングはしないでください(今回の写真の一部はマットの上なので素足ですが)。足の裏の皮膚が破れて、出血するのが目に見えています。それから、記録を競うのではなく、あくまで自分との競争だと理解してください。特に若い選手は、すぐ周りに負けたくないという勝負意識が働いて、自分の正しいフォームを無視しがちです。指導者の方も気をつけて行わせてください。

 以上がメディシンボールを使用したトレーニングで意識して欲しいことの説明です。

ソフトボール・マガジン2006年5月号掲載

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